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『火花』を読む

家内が買ってきたので、読んでみました。
著者はよくテレビで見ていたのですが、正統派文学青年というか、昔よくいたタイプの文学青年。
こんな人がなぜお笑いの世界に入ったのだろう?と不思議に思いつつ、何となくシンパシーも感じて陰ながら応援する気持ちで見ていました。

文体は抑制が効いていて品があり、好みのタイプです。音読すると淀みなく自然に読める。
多読家ゆえに表現力が確かで、おそらく華麗な文体でも凝った文体でも自在に書けるんでしょう。
それを敢えて抑え目に書いている感じ。『言葉に酔う』のを良しとしない、良心的な表現者です。
表現することにとても誠実な姿勢が感じられます。

内容はネタバレになっては迷惑なのであまり踏み込みませんが、天才的な先輩芸人との交感を瑞々しく描いて、お笑いとは、漫才とは、と深く追及していきます。
この先輩はウケるために、自分の身体に取り返しのつかない改造を加えてしまうような人です。主人公は敬愛と憐憫の情とを抱きつつ、影響されていきます。
が、逆に先輩の方が恐るべき才能の後輩に影響され、追い詰められているようにも見えました。

又吉氏は太宰治に傾倒したと言ってます。
思春期に本を読み始めた人は、かなりの割合で太宰の影響を受けているのではないでしょうか。
『太宰とはハシカのようなものである』などという人もあります。私もその一人で大いに影響を受け、思春期には自分を甘やかすのがカッコよく見えたりして、一時怠惰なナルシストの生活に溺れました。
社会人になって間違いに気づいてハシカが治る訳ですが、それが正しかったとしても面白い人生とは言えません。
仕方のないことですが。

氏は青春の蹉跌を描きながらも感傷に陥らず、真摯な態度で追及し続けます。そこが私のような凡百の太宰ファンとの違いでしょうか。

『火花』を読んで、20代のころの悩みや夢や友人たちとの交感を、懐かしく思い出しました。
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